主な裁判例

アーバンコーポレイション事件

最判平成24年12月21日集民242号91頁

東芝事件

東芝株式を取得したと主張する投資者らが、①有価証券報告書・四半期報告書に不適切会計に関する重要な虚偽記載があったこと、②内部統制報告書でも内部統制が有効であると虚偽記載があったこと、③連結子会社の減損損失の開示を怠り適時開示義務に違反したこと、
を理由に、東芝に対して損害賠償を求めた事案。

オリンパス事件

オリンパス株式会社の株式を取得した投資者らが、オリンパスが提出した連結純資産を約500億円から約1200億円を過大に計上する等の虚偽記載等があったことを理由として、オリンパスに対して損害賠償を求めた事案です。

西武鉄道事件

本判決は、有価証券報告書等の虚偽記載を理由とする損害賠償請求において虚偽記載と相当因果関係のある損害の範囲について、最高裁判所がはじめて判示したリーディングケースです。

ライブドア事件

株式会社ライブドアホールディングスの株式を取得した投資者ら、同社が提出した有価証券報告書に連結経常赤字約3億円を連結経常黒字約50億円との虚偽の記載があったことを理由として、約108億円の損害賠償を求めた事案です。

アーバンコーポレイション事件

不動産に関するコンサルティング会社であった株式会社アーバンコーポレイションが提出した臨時報告書及び有価証券報告書に虚偽の記載があったことを理由として、同社の株主らが不服として再生債権査定異議の訴えを提起した事案です。

事案の概要

不動産に関するコンサルティング会社であった株式会社アーバンコーポレイション(以下「アーバン」といいます。)が提出した臨時報告書及び有価証券報告書に虚偽の記載があったことを理由として、アーバン株式を市場で取得した投資者らが、アーバンの民事再生手続において、金融商品取引法第21条の2に基づく損害賠償債権を再生債権として届け出たところ、アーバンがこれを全額認めなかったため、同社の株主らが不服として再生債権査定異議の訴えを提起した事案です。

同事件は、資金繰りが悪化していたアーバンが、BNPパリバ証券に対し300億円規模の新株予約権付社債(CB)を発行しましたが、実際には、同時にBNPパリバ証券との間でスワップ契約が締結されており、CBの払込金は即座にBNPパリバ証券に還流されることになっていたにもかかわらず、有価証券報告書等には、上記のCBによる調達資金の資金使途として、債務の返済に使用する予定である旨記載されているのみで、調達資金が上記スワップ契約に基づく支払金に充てられることについては、何ら記載がされませんでした。その後、アーバンは、資本提携交渉を進めていた米国大手投資銀行よりTOBの実行を拒絶され、上記の虚偽記載等の事実を公表すると同時に、民事再生手続開始の申立てを行ったというものでした。

本判決の概要

本件においては、有価証券報告書等の虚偽記載等の事実の公表と同時になされた民事再生手続の申立てによる株価の下落が、虚偽記載等によって生ずべき値下がりか否かが争われ、控訴審では、当該下落は、すべて虚偽記載により生じたものであると判示されました。これに対し、本判決は、虚偽記載と相当因果関係のある値下がりではないとして、当該値下がりについて金商法第21条の2第4項又は第5項(現第5項又は第6項)による減額を否定した原審を破棄差し戻しました。

なお、アーバンの有価証券報告書等の虚偽記載に係る事件は、本件以外にも多数の投資者が訴えを提起しており、他に最高裁判例が1件と多数の裁判例が存在します。

判旨

「以上によれば、本件公表日後1箇月間に生じたアーバン株の値下がりは、本件虚偽記載等の事実と本件再生申立ての事実があいまって生じたものであり、かつ、本件再生申立てによる値下がりが本件虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりということはできないから、本件再生申立てによる値下がりについては、本件虚偽記載等と相当因果関係のある値下がり以外の事情により生じたものとして、金商法21条の2第4項又は5項の規定によって減額すべきものである。
ウ また、本件公表日前1箇月間のアーバン株の値動きについてみると、記録によれば、アーバン株は、本件臨時報告書の提出よりも1箇月以上前の平成20年5月14日にその市場価格が716円(終値)となった以降、本件公表日に至るまで、ほぼ一貫して値下がりを続けていたことがうかがわれる。前記事実関係によれば、上告人は、当時、資金調達に困難を来すなど、その経営が危ぶまれる状態にあったのであって、上記値下がりには、上告人の経営状態など本件虚偽記載等とは無関係な要因により生じた分が含まれていることは否定できない。
(中略)
エ 以上によれば、アーバン株の値下がりによって被上告人が受けた損害の一部には、本件虚偽記載等と相当因果関係のある値下がり以外の事情により生じたものが含まれているというべきであるのに、これを否定して、被上告人が受けた損害の全部が本件虚偽記載等により生じたものであるとして、金商法21条の2第4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
「ア 金商法21条の2第2項は、「公表日前1月間の当該有価証券の市場価額……の平均額から当該公表日後1月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額」を虚偽記載等により生じた損害の額とすることができると規定しているが、同項にいう「公表日前」及び「公表日後」に「公表日」を含まないことは、その文言上明らかである。したがって、同項にいう「公表日」が平成20年8月13日である本件においては、「公表日前」1箇月間とは同年7月13日から同年8月12日までを指すものである(ただし、同年7月13日は日曜日であって、市場取引が行われていないから、同月14日から同年8月12日までの市場価額の平均額を算出すべきこととなる。)。」